DAY 29 一次不定方程式、ベズーの補題

今回は一次不定方程式の諸々の定理について学んだ。

まずは次の定理について示す。

(以下の証明について、整数の集合を\mathbb{Z},自然数の集合を\mathbb{N}とかく)

定理1

ある空集合でない\mathbb{Z}の部分集合Mについて、

a,b\in M \Rightarrow a-b\in M\cdots (A)が成立するとき

Mに属する最小の自然数dとすると

M=\{kd|k\in\mathbb{Z}\}が成立する。

証明

M空集合ではないからある要素を持ちその要素をa\in Mとすると

(A)よりa-a=0\in Mである。

またこれより任意のx\in Mについて

0-x=-x\in M\cdots (B)

このことからa,b\in Mについてa+b=a-(-b)\in M\cdots (C)

次に、N=\{kd|k\in\mathbb{Z}\}とおくと

N\subset Mであることを示す。

まず、nd(n\in \mathbb{N})\in Mであることを数学的帰納法で示す。

(i)n=1のときの成立は明らかである。

(ii)n=mのとき成立、すなわちmd\in Mであるとすると

n=m+1のとき(C)より

(m+1)d=d+md\in M

よってn=m+1のときも成立する。

したがって任意の自然数nについてnd\in M

また(B)より-nd\in M

したがって任意の整数kについてkd \in Mである。

よってN\subset M

次にN\supset Mであることを示す。

Mの任意の要素xは整数であるから除法の原理より

x=dq+r(0\leq r \lt d)となる整数q,rが存在する。

r=x-dqで、x,dq\in Mと(A)からr\in M

いま、r\neq 0を仮定すると 0\lt r \lt d

このことはr\in MであってdがMに属する最小の自然数であることに反する。

したがってr=0

すなわちMの任意の要素xはq\in \mathbb{Z}を用いてx=dqとかける。

したがってN\supset MとなってN=M

この定理の証明だけでもなかなか骨が折れるが、次が本陣である。

定理2

a,b0でない整数であるとき、

ax+by=1を満たすx,y\in \mathbb{Z}が存在する \Leftrightarrow a,bは互いに素

証明

(\Rightarrow)

gcd(a,b)=gとするとa=gA,b=gBとかける。

よってgAx+gBy=g(Ax+By)=1

x,yが整数であるからAx+Byも整数となりg1の約数であって

このことからg=1

よってa,bは互いに素である。

(\Leftarrow)

M=\{ax+by|x,y\in \mathbb{Z}\}とすると

x,X,y,Y\in MについてaX+bY-(ax+by)=a(X-x)+b(Y-y)\in M

したがって定理1よりMに属する最小の自然数dとすると

Mの要素はdの倍数である。

a=a\cdot 1 + b\cdot 0,b=a\cdot 0 +b\cdot 1よりa,b\in Mだから

a,b共にdの倍数である。

すなわちda,bの公約数であり、a,bが互いに素であることからa,bの公約数は1のみである。

したがってd=1

d=1\in Mであるから、ある整数x_0,y_0が存在して

ax_0+by_0=1となる。

よって題意は示された。

ついでにより一般的な次の定理について示す。

定理3-ベズーの補題

a,b,c0でない整数であるとき、

ax+by=cを満たすx,y\in \mathbb{Z}が存在する \Leftrightarrow cgcd(a,b)の倍数

証明

gcd(a,b)=gとすると、

a=gA,b=gB(A,Bは互いに素)とかける。

(\Rightarrow)

c=ax+by=gAx+gBy=g(Ax+By)

となり、Ax+Byは整数であるからcgの倍数である。

(\Leftarrow)

定理2よりA,Bが互いに素であるから

Ax+By=1を満たすx,y\in \mathbb{Z}が存在する。

条件よりc=gCとかけるから、Ax+By=1の両辺をc=gC倍して

gACx+gBCy=c

aCx+bXy=c

すなわち、Cx=X,Cy=Yとおけば

aX+bY=cをみたすX,Y\in \mathbb{Z}が存在することがわかる。

よって題意は示された。

以上である。

これは一次方程式の分野のみならず他においても応用が効きそうな定理であるから、思いつき次第どんどん活用していきたいものだ。
いいかげん他の教科もしたいが、数学が楽しいのでなかなか他の教科に手がでない。

今日の勉強時間

  • 新課程チャート式 基礎からの数学I+A:2時間15分

合計:2時間15分